MUKUの目指したこと
なぜMUKUは生まれたのか
昔、初めて本格的な登山に挑んだ時、私はストックも杖も持たず、むしろそれを誇りにただ歩いていました。当時は必要ないと思っていたのです。しかし、山道で何度もすれ違った登山者たちの中にはストックを手に軽やかに歩みを進めている人がいました。足だけで必死に登る私たちはどんどん疲れていき、ストックを使いこなす彼らは推進力を得てすたすたと、そして下りでは足腰の負担を和らげながら通り過ぎていきました。
「次はストックを持って登ろう」と心に決めた下山の途中、ふと見た清流の沢に、一本の鮮やかな色のストックが落ちていました。近づいて拾い上げると、それは収縮機能が壊れて中途半端な長さになったアルミのシャフトとプラスチックのグリップがついた-ゴミ-だったのです。静謐で崇高な自然の中にあって、明らかに不自然な存在。鮮やかな色彩のストックは、もはやそこにあるべきものではなくなっていました。
後日、スポーツ用品店でストックを探しましたが、どれもアルマイト加工(※)された鮮やかなシャフトにプラスチックグリップが付いた収縮式や折りたたみ式ばかり。あの沢に落ちていた光景がうすら寒さを伴って脳裏をよぎり、手に取る気にはなれませんでした。それから何年もの時が流れ、ストックを開発する機会に恵まれたのです。
ものづくりの原点
このプロジェクトには、奇跡的な出会いがありました。
- 埼玉伸管工業株式会社様:日本有数のアルミニウム再伸技術を持つ企業。軽量で強靭なポールを実現する技術と製品化する熱意をもちあわせていらっしゃいました。
- 日本山岳協会会員・日本プロレスキュー協会代表:豊富すぎる経験に裏打ちされた知見でポールに求められる自然保護と使い勝手を両立させる実践的なアドバイスをいただくことができました。
この二つの奇跡が重なり、「自然に寄り添い、登山者に寄り添った」トレッキングポール、MUKUが誕生しました。
MUKUの弱点
- MUKUはシンプルな一本ものゆえ、電車など公共機関での持ち運びには不便さを伴います。
- シャフトはアルマイト処理(※)を施していないため、使用に伴い細かな傷がつきやすいです。
- アルマイト処理を施さないため華やかさはありません。
※アルマイト加工について
アルマイト処理とは:耐食性・美観・表面硬度向上を目的とした技術。日本が世界に誇る素晴らしい表面処理であり、化学薬品やエネルギーを管理しながら、きれいで高性能な製品を私たちに提供しています。
【環境負荷に対する取り組み】
- 化学物質(硫酸・クロム酸など)の使用と管理
- 電力大量消費による温室効果ガス排出
- 廃液・廃棄物処理の環境配慮
これらを厳しく管理し、環境負荷対策と実用性を両立しています。私たちの生活と切り離せない加工です。
MUKUが選んだ道
そんな中、私たちは何も足さない無処理素材を選びました。
- マグネシウムを添加することで高耐食性を実現した合金の選択
- 耐食性を活かし表面処理を省くという選択
- 数多くの山を登ることでできる数々のキズさえも愛するという選択
☆自然に遊ばせてもらう登山という営みだからこそ、自然に寄り添う。安全・軽量という本質的な機能を追求し登山者に寄り添う。これ以外の機能は脱ぎ捨てるという選択をしました。
こんな理由も、皆様の選択肢の一つに加えていただければ幸いです
- すべての傷は「勲章」
表面をコーティングしていないからこそ、使うたびにできる傷も、あなたとMUKUが歩いた証になります。 - シンプルな構造だから末永く使える
壊れにくく、修理もしやすい。 長く大切に使うことが、何よりの環境配慮だと私たちは信じています。
MUKUの優れた特徴
- 自然に配慮した素材選びと製法
- 圧倒的な剛性感と安心感、そして実感できる軽さ
- グリップを長くとることで登りも下りも思いのまま
どれもこれも、自然に、登山者に、寄り添うためにたどり着いた答えです。
MUKUの未来
アルマイト加工が日本が生み出した世界に誇る技術であるように、 これからは、**日本発の「無垢の登山道具文化」**を世界に広げたいと思っています。
登山というヨーロッパで生まれた素晴らしいスポーツ。 多くの素晴らしい道具が生まれてきましたが、ここに一つ、 「自然に寄り添い、ただ登山を楽しみ身体への負担を和らげる」 MUKUという日本発の道具が存在してもいい。
携帯性を犠牲にすることで得た自由、レンタルという仕組みを使って、必要な場所で、必要な人に届ける。それがMUKUの役割です。
この思いに共感頂ける数多くの登山者の皆様に手に取っていただくのがMUKUの願いです。
無垢から、未来へ。日本から、世界へ。
MUKUはSAL=Saitamashinkankogyo×Aluminum×LOBALがお届けします